祖父の代から続く豆腐屋。地域とつながり、地域に愛される味を作り続けたい
昭和3(1928)年に創業して、96年。千曲市屋代にある滝沢豆腐店で迎えてくれたのは、おじいさまの代から引き継いで3代目の店主、滝沢博司さんです。小さな工房では、昔ながらの製法で、豆腐や厚揚げ、油揚げなどを製造しています。地元の学校給食や保育園に豆腐を卸しているほか、児童館で移動販売を行ったり、地元小学校の社会見学や体験学習に協力したりと、地域活動にも力を入れる滝沢さん。しあわせバイ信州ともつながるその思いをうかがいました。
1日に100丁前後の豆腐を、滝沢さんが一人で製造している
親しみあふれる「ひろしくんの豆腐」。給食用には千曲産大豆も使用
今うちで作っているのは、「もめん豆腐」、「きぬ豆腐」、「おぼろ豆腐」、冬季限定で「焼き豆腐」や「ざる豆腐」など、7〜8種類。揚げ物では「厚揚げ」、小さくカットしてから揚げる「厚揚げコロ」、ざる豆腐を揚げた「丸揚げ」などがあります。
あるとき、常連のお客さんが「自分は博司くんの豆腐しか食べないんだ」と言ってくださって。「『ひろしくんの豆腐』ってわかりやすくていいな」と思い、商品名に付けました。
売れ筋は、夏は口あたりのいいおぼろ豆腐、冬は鍋用にもめんやきぬ豆腐がよく出ます。昔ながらの「にがり豆腐」というのもあって、今では珍しいかもしれないですね。
現代では凝固剤に寄せ粉(澄まし粉、硫酸カルシウム)を使うのが一般的で、にがり(塩化マグネシウム)を入れると凝固反応がとても早いため、きれいに固めるのに技術が必要なんです。しっかりとした固さがあり、大豆の甘み、旨みを感じられるのが「にがり豆腐」の特徴です。
この「にがり豆腐」と、水にさらさずザルで水気を切る「ざる豆腐」には、千曲市産の大豆・ナカセンナリを使っています。一方で、やわらかさ、なめらかさを出すにはカナダ産大豆の方が適しています。どんな豆腐を作りたいかによって、大豆は使い分けをしています。
豆の甘みを出したい豆腐には、地元千曲産の大豆ナカセンナリが合う
地域社会への貢献や食育にも積極的に取り組む
学校給食の豆腐も、千曲産のナカセンナリを使って作ります。地元で採れた食材で、地元の豆腐屋が作った豆腐を、地元の子どもたちに食べてもらう。これはやっぱりうれしいことで、ずっと続けていきたいですね。給食だと豚汁やきのこ汁などの汁物、麻婆豆腐に使われることが多いようで、児童館に販売に行くと小学生のお子さんが「今日の豆腐うまかった〜!」と言ってくれることもあるんですよ。
豆腐の販売は、スーパーだと長野県A・コープあんず店で。ほかは、近くの児童館など地域の方々が集まるところに私が商品を持って行き、移動販売のような形で行っています。またここの作業場でも、自分がいるときは販売もしています。
昔は、母が自転車に乗って地域のお宅をまわって販売していたんですよね。祖父母、両親の代から、地域の方たちに支えてもらって豆腐を作ってきました。ですから、地域とのつながりは自分も大切にしたい。そんな思いから、地域貢献活動も10年以上続けています。
豆腐作りの見学に来た屋代小学校の2年生たち。製造工程に興味津々
昨日と今日は、「地域を知る」というテーマで、近くの小学生が30人ずつ見学に来たんです。大豆を潰すところからパック詰めまで工程を一通り見学してもらい、最後は質問コーナーも。できたての豆乳を飲んでもらうと、「初めて飲んだ、めちゃくちゃうまい」「豆乳って大人の味」「うーん苦手」「家でも飲むけど、こっちの方が味が濃い」「牛乳は飲めないけどこれはいいな」など、ストレートな感想が飛び交って、楽しかったです。また給食で豆腐が出てきたときに、ああやって作っていたんだなと思い出してくれたらうれしいですね。
豆腐ができあがると、子どもたちから歓声が湧き起こった
毎日食べたい「ほっとする味」を、これからも守り続ける
「昔母がお客さんの目の前で揚げたての厚揚げを出していたように、対面販売もできたらいいな」と滝沢博司さん
かつてはこのあたりには7〜8軒豆腐屋があって、昔はラッパを吹きながら移動販売していたそうです。そのラッパの吹き方、音色で、どの豆腐屋かお客さんはわかったらしいんです。おもしろいですよね。
今、千曲市内に残っている豆腐屋は3件だけ。当店はあと数年で創業100年を迎えます。うちの豆腐は、やたらうまいというより、「ほっとする味」「間違いない味」と言われます。昔両親が作っていた味を復活させようと、妹と試行錯誤して再現した「がんもどき」も、おかげさまでとても好評なんです。新商品よりも、なじみある味を大切に。毎日飽きずに食べたくなるような豆腐を、これからも作り続けていきたいですね。
【詳細情報】
- 社名
- 滝沢豆腐店
- 住所
- 千曲市屋代1756
- TEL
- 026-272-0614
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ARURA・しあわせバイ信州編集部
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