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木曽漆器工業協同組合(塩尻市)

630年の歴史を持つ伝統工芸・木曽漆器。漆の植樹や“木育”、イベントなどで文化を未来へつなげたい


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塩尻市木曽平沢とその周辺で製造されている木曽漆器。木曽ヒノキをはじめとする豊かな森林資源や、漆器に適した湿潤な気候、中山道の街道文化などにより、産業として大きく発展してきました。近年では、金属と漆を融合させた木曽漆器が長野冬季オリンピックの入賞メダルに採用されたことも。長野県が誇る伝統工芸、木曽漆器の魅力と未来に向けた取り組みについて、木曽漆器工業協同組合の事務局長、武井祥司さんにうかがいました。

 

 

中山道の街道文化とともに育まれ、発展した木曽漆器

 

木曽地域の漆塗は、現在の木曽町にあった竜源寺の経筥(経典を収める箱)に「応永元年」の年号と献納者の名書きされていたことから、600年以上の歴史があるといわれています。

1600年代頃、木曾平沢地区ではまとまった形態で漆器生産が行われていました。木曽ヒノキなどの森林資源や気象風土に恵まれ、街道文化とともに発展。江戸後期には、平沢で生産された漆器は「木曽もの」「木曽の塗り物」「平沢もの」などと呼ばれ、江戸や大阪などに取次所ができるまでになりました。

 

明治初期、下地材に優れた錆土(さびつち)が地元で発見されたことで、堅牢な漆器生産が可能に。以来、塩尻市木曽平沢は全国有数の漆塗の産地としてその名を馳せています。

1949年、塩尻市木曽平沢が重要漆工集団地に、また1975年には木曽漆器が国の伝統的工芸品に指定されています。

 

 

軽くて丈夫、漆の艶が美しい木曽漆器のうつわ

 

 

木曽材木工芸品にも使われている木材は、木曽五木といって、ヒノキ、サワラ、アスナロ、ネズコ、コウヤマキ。木曽の木材は古くから良質で、木曽ヒノキは伊勢神宮の建築材としても使われているほどです。

一方で、木曽地方で使う漆のほとんどは、中山道を通じ他国に委ねていました。そのため、木曽山を支配していた尾張藩の指示により「漆役所」を設置。ウルシの木の育成栽培を幾度となく試みましたが、山が険しく寒さ厳しい環境ゆえに適さず、当時は定着しなかったといいます。

 

木曽漆器組合では、なんとか地元産の漆を確保したいと、半世紀以上にわたって塩尻市内とその周辺でウルシの植樹を行っています。

ウルシの木が成長し、漆を採取できるようになるまで、10年以上かかります。しかもウルシの木1本から採れる漆の量は、わずか牛乳瓶1本分だけ。7〜8月の盛夏、一滴一滴採取された樹液を精製し、貴重な漆ができあがるのです。現在組合で管理しているウルシは、1.3haの土地に1300本ほど。産業を守るため、これからも継続して活動してまいります。

 

 

「道の駅木曽ならかわ・木曾くらしの工芸館」1階には日用品やアクセサリーなどがずらり。2階には家具なども並ぶ

 

 

学校給食で塗り箸を使用。子どもの頃から地域の工芸に親しみを

 

大正から昭和にかけては、お膳や座卓、家具などがヒット商品でした。業務用のお膳は丈夫さが求められたので、漆の美しさに加えて丈夫で実用的な木曽漆器が重宝されたようです。個人の家では、こたつの卓にもよく使われていましたね。

現代では、今の生活様式に合うシンプルでモダンなデザインの木曽漆器が登場しています。木だけではなく、ガラスや革など異素材と漆を組み合わせる技術も生まれました。

 

現在の組合員は90名あまり。昭和初期の頃と比べると半分ほどで、後継者不足は大きな課題です。そんな中、産地と自治体で人材を育成しようと、地域おこし協力隊の制度も活用しています。漆器職人に弟子入りした若い方は、神社仏閣をはじめさまざまな漆文化財の修復の仕事にも携わりながら、腕を磨いています。伝統の技術を若い方に伝承し、次の世代にも木曽漆器の文化を引き継いでほしいと考えています。

 

 

心躍るカラフルさ。モダンな木曽漆器も続々

 

 

これも取り組みのひとつですが、塩尻市内の全小中学校の給食で、木曽漆器塗り箸を導入しています。子どもの頃から地元の伝統工芸に触れ、慣れ親しんでほしいという思いです。いい箸を使うと、持ち方や、食事中の姿勢も正しくなったりするんですよ。地域の木の文化を伝えること、木育(もくいく)を大切にしていきたいですね。

 

伝統的な製法で作った木曽漆器は、艶が失われたり、傷が付いてしまったりしても、漆の塗り直しや補修をして使い続けることができるんです。ぜひ、愛着を持って長く使っていただけたらうれしいです。

 

 

重要伝統的建造物群保存地区の町歩きも楽しみに

 

信州の伝統的工芸品が一堂に会した「つかう工芸」では、職人による実演が行われることも

 

 

2024年8月には、組合がある「道の駅木曽ならかわ・木曾くらしの工芸館」に、長野県の伝統工芸品を集めた常設展「信州の伝統的工芸品展示『つかう工芸』」がオープンしました。松代焼や松本家具、飯田水引など、地域の風土や文化、日々の暮らしの中で育まれてきた工芸とクラフトの連携をお楽しみいただけます。

 

工芸館に来館されたら、少し足を伸ばして木曽平沢の町並みも訪れていただきたいですね。ものづくりをする人々が住む町で、重要伝統的建造物群保存地区に選定されていると

ころは、全国でここだけなのです。

 

毎年6月第一土・日曜には、楢川地区一円で「木曽漆器祭」が開催されます。特に木曽平沢の町には例年70以上の漆器、クラフト、お土産等の店が立ち並び、昨年は2日間で12,000人あまりのお客様に来ていただきました。

10月には「秋の漆器祭」を開催。春とは趣が変わり、木曽平沢の町並み保存地区をゆっくり散策しながら、各店舗で木曽漆器を見ていただけます。ワークショップや、工房の見学ツアーなども楽しめますよ。

 

地域の産業というのは、地域で作られたいいものを多くの人に使ってもらうことで根付いていきます。こうした催しなどを通じて、長野県の皆さんに木曽の文化を知っていただき、伝統工芸をもっと身近に感じていただけたらと思います。

 

【詳細情報】

社名
木曽漆器工業協同組合
住所
塩尻市大字木曽平沢2272-7
TEL
0264-34-2113
URL
http://kiso.shikkikumiai.com/main.html
【この記事を書いた人】

ARURA・しあわせバイ信州編集部

「信州が大好き!」をモットーに、発見や驚きに満ちた情報、ほっと安らぎを感じられる情報、テレビや雑誌では紹介しきれなかった情報など、長野県をますます好きになる情報を発信します。