PROJECTS
内堀醸造株式会社 アルプス工場(飯島町)

長野県で唯一の酢の専業会社として、地域とつながり、新しいものづくりにも挑戦していきたい


メーカー/食品・農林水産

1876年、岐阜県八百津町で創業した内堀醸造株式会社。岐阜本社から車で約1時間30分、長野県南部の飯島町に「アルプス工場」ができたのは、2006年のことです。酢造りに適した環境という飯島町で、日々どんな酢が生まれているのでしょうか。酢造りで大切にしていること、そして地域との関わりについて、アルプス工場の工場長・杉江毅さん(写真右)と、営業企画部部長の内川直之さん(左)にお話をうかがいました。

 

 

酢造りで大切な環境がそろう、ふたつのアルプスが見える場所

 

当社は岐阜で創業し、もうすぐ150年になります。当初はたまり醤油や味噌も製造していましたが、50年ほど前から酢の専業会社となりました。酢の専業会社は全国で100社弱ありますが、長野県ではここ飯島町のアルプス工場ただひとつだけなんです。

 

飯島町は標高740m、中央アルプスと南アルプスを望む自然豊かな町。酢の醸造には水と空気と微生物が大切で、その環境が整っているのが、この場所を選んだ理由です。

仕込み水に使うのは、中央アルプスの伏流水。塩素殺菌をせず、濾過するだけで使えるほどきれいな水で、純度の高い酢を醸造することができます。米やりんごなど、酢に必要不可欠な原材料がそろうのも、長野県の魅力といえますね。

 

 

米酢に黒酢、果実酢、調味酢など、さまざまな酢を醸造。世界45カ国に輸出も

 

 

 

基本理念は「酢造りは酒造りから」。「酢」という文字は「酒から作る」と書くように、いい酢造りはいい酒造りから始まると考えています。この理念を大切に、発酵技術を磨いてきました。

当社の商品は約800アイテムあり、そのうち210アイテムをここアルプス工場で醸造しています。売り上げとしては家庭用と業務用が半分ずつくらいで、スーパーなどのPB商品もあります。

 

 

高級ホテル御用達のワインビネガーに、純米大吟醸酢、飲む酢など、多彩な品揃え

 

内堀醸造の人気商品。公式サイトには料理家11名が提案したレシピも掲載されている

 

 

歴史のある商品でいうと、純ワインビネガー(写真右)は、実は日本で初めて開発されたワインビネガーなんです。最初の東京オリンピックのとき、当時の社長が東京の老舗高級ホテルの料理長のもとを訪れ、この酢を洋食に使ってもらえないかと相談し、採用されたというエピソードが残っています。今でもそのホテルのポテトサラダに使われているんですよ。ボトルの形やラベルもクラシックですよね。

 

特選味付けぽん酢(写真左から3番目)は、とある有名人が愛用しているとテレビで紹介され、大人気に。ぽん酢には一般的にうま味調味料を入れるメーカーが多いのですが、当社では自社でとった利尻昆布と枕崎製造かつお節の一番出汁を使用しています。

 

最高級といわれる日本酒の純米大吟醸のように、米を50%まで削って醸造した、純米大吟醸酢(写真右から2番目)も注目いただきたいですね。2017年、日本酒の会社でも使われているダイヤモンドロールという精米機を、当社が酢の専業会社として初めて導入。普通の米酢よりもクリアで軽やかな酸味を味わっていただけます。ちなみに、こちらは長野県産米を100%使っています。

 

長野県産原料でいうと、当社は「飲む酢」も得意としていて、県産ふじりんごの果汁で作った「信州りんごの酢」(写真左)も好評をいただいています。醸造したりんご酢にふじりんご果汁を加えて仕上げたもので、香りがよくてフルーティ。炭酸割りがおすすめです。

 

 

発酵を見極め、じっくり熟成。半年かけて高品質な酢が完成

 

酢造りの工程としては、まず酒造り。米やりんご果汁などからアルコール発酵を行い、1カ月ほどかけて「もろみ」を造ります。

次に酢酸発酵。衛生管理、温度管理を徹底し、微生物との対話を図りながら、香りよく安定した品質の酢を造ります。これも1カ月ほどかかります。

そして、熟成。できたての刺激の強い酢から、おだやかで調和のとれたやわらかい酸味を醸し出すため、じっくり熟成させます。

 

 

もろみの発酵度合いを見極めて、まずはいい酒造りから

 

 

もろみを発酵させる際には、「においをつかむ」というのですが、進行中のアルコール発酵の度合いを人の感覚でチェックしています。機械まかせにするのではなく、その日の気温や湿度から発酵度合いを見極め、いい酒造り、いい酢造りに注力しています。

 

先ほどお話したように、酢は商品になるまで半年ほどかかります。正直、回転率が悪い商品なんです。それでも、変えてはならない伝統的な製法は守り、技術革新への対応も積極的に行いながら、質のいい商品を安定的にお届けしたいと考えています。

 

アルプス工場では地元の小学生を対象に、工場見学も毎年行っています。子どもたちにとって酢はなじみがないように思われますが、マヨネーズやケチャップ、ソースにも酢は使われているんですよね。当社のものづくりの現場を見てもらうことで、酢に親しんでもらえたらと考えています。

 

 

バルサミコ酢も樽で熟成中

 

 

実は、酢には減塩効果があるといわれています。酢は塩味を引き立てる働きがあるため、塩分少なめでも酢を加えることでおいしく仕上がるのです。お味噌汁にほんの少しお酢を入れるのもおすすめですよ。

ちなみに、当社の社員食堂では酢が使い放題・飲み放題なのですが、健康診断で高血圧の社員がとても少ないと産業医に褒められています。健康にもきっと役立っているのではないかと思います。

長野県のみなさんにも、県内で醸造した酢を知っていただき、毎日の食事に気軽に取り入れていただけたらうれしいです。

【詳細情報】

社名
内堀醸造株式会社 アルプス工場
住所
上伊那郡辰野町飯島町田切160-355
TEL
0265-86-8115
URL
https://www.uchibori.com
アルラ
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【この記事を書いた人】

ARURA・しあわせバイ信州編集部

「信州が大好き!」をモットーに、発見や驚きに満ちた情報、ほっと安らぎを感じられる情報、テレビや雑誌では紹介しきれなかった情報など、長野県をますます好きになる情報を発信します。