ARURA・しあわせバイ信州編集部
「信州が大好き!」をモットーに、発見や驚きに満ちた情報、ほっと安らぎを感じられる情報、テレビや雑誌では紹介しきれなかった情報など、長野県をますます好きになる情報を発信します。
りんごレザーを展開するプロジェクト「Rerigo(レリゴー)」とは、再生(Re)りんご(ringo)を意味する造語。信州の生産者が大切に育てたりんごを、皮や種まで資源として活用したい。自然災害などで市場に出せなくなったりんごを、再び日本の宝として輝かせたい。そんな熱い思いがこめられています。株式会社SORENA代表の伊藤優里さんがりんごレザーを手がける理由と、これからめざすものをうかがいました。
農業が抱える課題をなんとか解決できないか
信州大学繊維学部を卒業後、アパレル会社を経て、長野県内の果物加工会社に就職しておよそ10年。私の中で3つの違和感が芽生えていました。ひとつは、8割以上の果物を輸入に依存していたこと。もうひとつは、せっかく長野産の果物が手に入っても、虫が湧いてしまうと工場内に持ち込めないため、輸送中などに少しでも傷んだものは廃棄せざるを得なかったこと。そして最後のひとつは、台風19号の被害を目の当たりにしたこと。通勤中に堤防から見た、りんごの木が水没してしまった風景はあまりにもつらく、もう農業をやめようかと話す生産者さんの落胆の声も耳にするようになりました。
自分が子供の頃よりも、農業をとりまく環境はどんどん悪くなっているのではないか。次の世代はこのあとどうやって生きていくのだろうか。無力を感じると同時に、だからこそ、地域の生産者を減らしてはいけないと強く思いました。
そんなとき、サステナブル(持続可能)な素材を扱う展示会で、海外のヴィーガンレザーのことを知りました。ヴィーガンレザーとは、動物の皮を使わず、合成素材や植物などの材料を用いて、革の見た目や質感を再現した素材のこと。環境に配慮されているのに高級感があって、きちんと適正価格で販売されていて。これなら長野特産のりんごでもレザーがつくれるはず、と思ったのです。
そこで、2021年の春に起業。飯綱町の廃校を活用した「いいづなコネクトEAST」でシードルをつくる「林檎学校醸造所」の小野司さんと出会ったことを機に、シードルづくりの際に出るりんごの搾りかすを原料に使ってみることに。12月には信州ベンチャーコンテストで奨励賞をいただき、翌年春からは大手の皮革会社さんと協業して、量産に向けて動き出しました。
飯綱特産のりんごを余すことなく有効活用
りんごレザーは、生地はコットンで、樹脂に乾燥させたりんごの搾りかすを配合した合成皮革です。飯綱町でりんごジュースやシードルをつくる過程で出るりんごの搾りかすは、一日に1トン以上。それを町内で乾燥させて細かく粉末化し、国内メーカーの工場に運んで合皮に仕上げています。通常、合皮の樹脂は石油が原料ですが、りんごレザーは61%以上が植物由来。石油由来の原料の割合を大幅に減らし、環境への負荷を軽減しています。
また一般的な本革と比べて、りんごレザーは軽量で耐久性があり、撥水性が高く、熱にも強いという特徴があります。
りんごレザーを使ったアイテムは、バッグや財布、名刺入れ、コースターなどがあります。なかでも多くの方に注目していただいたのは、りんごをテーマにデザインしたこのトートバッグではないでしょうか。長野市に拠点を置く「IVY PRODUCTS」の革職人さんが一つ一つ丁寧につくり上げたもので、りんごを連想させる愛らしいフォルムと安定感が魅力です。
ほかにも、皇室御用達の老舗、御代田町・濱野皮革工藝のショルダーバッグや、シューマートのバレエシューズ、星野リゾートBEB5軽井沢のクリスマスランタンなど、県内の会社さんとのコラボアイテムも誕生しています。
生産者や職人、メーカーと手を携えて、地域を活性化したい
2024年10月には、りんごレザーが長野県主催「NAGANOものづくりエクセレンス2024」に認定されました。たくさんの方々のご協力のもと、優れた技術と品質として評価いただいたことをとてもうれしく思っています。
これからも地域の生産者さん、職人さん、メーカーさんと手を取り合って、みんなで生き残れる社会をつくりたい。環境に配慮しながら、地域経済も循環させていくこと。そうして命ある豊かな土地を大切に、持続可能な社会を、次の世代に引き継ぎたいと願っています。
「信州が大好き!」をモットーに、発見や驚きに満ちた情報、ほっと安らぎを感じられる情報、テレビや雑誌では紹介しきれなかった情報など、長野県をますます好きになる情報を発信します。