ARURA・しあわせバイ信州編集部
「信州が大好き!」をモットーに、発見や驚きに満ちた情報、ほっと安らぎを感じられる情報、テレビや雑誌では紹介しきれなかった情報など、長野県をますます好きになる情報を発信します。
明治から昭和初期にかけてシルクのシェア日本一を誇り、日本の近代化を支えた歴史を持つ岡谷市。戦後は時計やカメラなどの精密工業が盛んになり、現在も製造業が3割以上を占めるものづくりの町です。そんな岡谷で生まれて82年、岡谷商工会議所では地域独自の電子マネー「Okaya Pay」を開発・運用し、地域振興に取り組んでいます。その火付け役、岡谷商工会議所 中小企業相談所 商業・地域振興課長の清水千大さんにお話をうかがいました。
キャッシュレス化の推進で、かつての「岡谷スタンプ」が「Okaya Pay」に進化
明治期には、ここ岡谷で開発された「諏訪式繰糸機」が全国に普及し、日本の製糸産業が確立したという歴史があります。3万人以上いた製糸工場の工女さんの賄いに必要だったことから味噌や醤油の醸造業が増え、昭和30年代には味噌の生産量日本一になったことも。現代では金属加工などの製造業が多く、時代時代に合わせて新しいものづくりを打ち出してきた地域といえます。
昭和46(1971)年、地域内の店舗で買い物をするとスタンプが貯まる「岡谷スタンプ」が誕生。加盟店は多いときで530店舗、スタンプ発行額が年間2億円となり、昭和50年代には「日本一のスタンプ会」といわれたこともありました。
ただ、その後大型店の出店などにより地域のお店が減少し、経済環境が変化。台紙に貼るスタンプからカード化し「おかぽんカード」にリニューアルしたものの、キャッシュレス化推進の波もあり、発足50周年を迎えた際、新しいサービスに移行することになりました。
それが、電子マネーと地域ポイント機能を兼ね備えた「Okaya Pay(オカヤペイ)」です。
地域の中で経済が巡り、地域が活性化する仕組みづくり
2020年4月にスタートしたOkaya Payは、おかぽんカードから40店舗が移行、新たに約40店舗が加わり、現在は80店舗ほどが加盟しています。年会費や発行手数料は無料、取扱店でカードが発行され、その場ですぐに使うことができます。スマホアプリにカード情報を登録して利用することも可能です。
機能は
1.電子マネーとして
取扱店の店頭で現金を渡してチャージ。スマホアプリなら、クレジットカードやPayPayからチャージできます。小銭でのやり取りがなく、スマートに買い物ができます。
2.ポイントカードとして
取扱店にOkaya Payを提示して買い物すると、100円(税抜)につき1ポイントを付与。電子マネーではなく現金で支払っても同様です。貯まったポイントは1ポイント1円で利用できます。
買い物以外にも、岡谷市が予算を組んで発行している「行政ポイント」が付くのが大きな特徴。「特定健診受診で200ポイント」、「生きがいデイサービス参加で250ポイント」、「禁煙外来受診で1000ポイント」、「出生おめでとう5000ポイント」など、25種類ほどあります。
マイナンバーカード普及促進で、マイナポイントとは別に「マイナンバーカード提示で2000ポイントプレゼント」という岡谷市独自の事業も行いました。
仕組みとしては、大手のクレジットカードや電子マネーの場合、決済手数料は岡谷市以外に流出してしまいます。Okaya Payの決済手数料は運営する岡谷商工会議所に支払われるため、その資金を地域ポイントとして消費者に還元しています。つまり、取扱店に負担いただいた資金は、取扱店に戻ってくるという、経済循環サイクルが実現できるというわけです。
なお、地域のお店により多く足を運んでいただきたいという狙いから、電子マネーは最終利用から3年、ポイントは最終利用から1年という有効期限を設けています。
大手決済事業者とは住み分けをしつつ、共同でのキャンペーンを実施することもあります。PayPayの「20%還元キャンペーン」に合わせてOkaya Payの「30%還元キャンペーン」を打ち出した際は、46日間で6億3890万円の経済効果がありました(2021年7月1日〜8月15日)。
Okaya Pay独自でも、「2月は毎日5%還元」など消費が落ち込みがちな時期にキャンペーンを行ったり、2024年はしあわせバイ信州と連動して「9〜11月の0の付く日は10%還元」というキャンペーンも。今後も県と連携して、地域経済循環をアピールしていけたらと考えています。
これからの展開としては、今後人口が減っていくなか、岡谷市内の店舗が営業を継続させるためには商圏を広げていくことも必要です。近隣の市町村とも協力して、「広域で使える電子マネー+市町村ごとのポイント」といった広域展開も考えています。
カード発行数は、約2万7200枚(2024年12月末現在)にのぼります。利用者の皆様には、地域でお得に楽しく買い物をしていただけたら。地域内の経済循環サイクルを定着させて、地域の活性化に向けてこれからも取り組んでいきたいと思います。
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