信州そばを全国へ、世界へ。麺一筋60年のメーカーが、そばを通じて信州の魅力を発信

そば、うどん、中華麺などの製造と販売を手がける製麺メーカー、信越明星。生そばはもちろん、簡単便利な冷凍そばの生産を強化し、業界トップレベルのシェアを誇ります。長野県で信州そばをつくるメーカーとして、しあわせバイ信州運動の活動に共感したと話すのは、OEM担当課長の大谷和史さん。信越明星が大切にするそばづくりの思いをうかがいました。

2014年に新設された、上田市下塩尻のそば専用工場。本社工場・下塩尻工場ともに、太陽光発電設備を導入

素材にこだわる、冷凍そばトップシェアの会社

信越明星は1963年に創業。当初はインスタント麺を中心に製造し、その後、そばやうどんなどのチルド麺、冷凍麺の製造を開始しました。現在はそば・うどん・ラーメン・冷やし中華など、さまざまな麺商品を製造・販売する、麺一筋60年以上の会社です。

会社の大きな転機となったのは、2014年、上田市内にそば専用工場を新設したこと。そばづくりにこだわり、そばに特化した設備を導入しました。

ただ、当時はまだ売上も現在の半分以下で、まさに社運を賭けた投資でした。そばの本場・信州から“世界一のそばメーカー”を目指す。その壮大な目標に向けて、社員一丸となり、これまで以上にそばの開発・販売に力を入れるようになったのです。

おかげさまで、現在、「冷凍そば」においては業界トップレベルのシェアを獲得しています。

商品のラインナップは、そば、うどん、冷やし中華、ラーメン、焼きそばなど300品以上。自社商品はもちろん、OEMやPB商品も数多く手がけています。

大切にしているのは、素材へのこだわり。原料を提供してくださる生産者とのつながりを大事にし、お客様にさらなる安心と安全な商品をお届けしたいと考えています。

そばの香りとコシが楽しめる、オール長野県産の「安曇野生そば」

信州で栽培したそばを、信州で製麺した、生そばと冷凍そば

長野のみなさまにぜひ味わっていただきたいのは、生そば「安曇野生そば」と冷凍そば「石臼挽き 信州安曇野そば」です。どちらもそば粉は、安曇野・松本近郊の農園でそばを栽培する農業生産法人「かまくらや」から仕入れているもの。かまくらやは荒廃農地を再び畑として利用する活動を意欲的に行っていて、耕作放棄地の解消や地域の雇用創出に注力しています。

そうした契約農場さんとつながることで、品質にぶれのないそば粉を安定して仕入れられることに加え、生産者の顔が見えるという大きな安心感も得られています。

「安曇野生そば」は、そんなかまくらやの安曇野産そば粉を100%使用し、つなぎの小麦粉も信州産という、主原料がオール長野県産の5割そばです。

手打ち風の食感を再現するため、特殊な製麺機を使用して製麺しているのが特徴。本場信州らしく、「ざるそば」スタイルで召し上がっていただきたいので、こだわり出汁のストレートつゆも添付しています。

「安曇野生そば」(左)と、冷凍の「信州安曇野そば」

冷凍そばの「石臼挽き 信州安曇野そば」も、安曇野産そば粉を使用。今年はロール挽きから石臼挽きにバージョンアップし、よりそば本来の香り・風味を楽しめるようになりました。生そばはご家庭でおいしく茹でるのが意外と難しいのですが、冷凍そばは凍ったまま電子レンジで温めるだけで、簡単に召し上がっていただけます。

こちらは希釈タイプのつゆ付き。かけそば、ざるそば両方の食べ方を楽しんでいただけます。つゆはそれぞれのそばの特性に合わせて、甘さや塩味、出汁の利かせ具合などを調整してつくっています。

農業生産法人かまくらやのみなさん。長野県産そば製品を広げることで、地域の農業を盛り上げることができる

手軽でおいしい信州そばを、世界中に広めたい

当社の大きなテーマのひとつは、「そばの裾野を広げたい」ということ。一口にそばといっても、本格手打ちそばの店から立ち食いそば、コンビニのそばなどさまざまな形があります。それぞれの良さがあり、その集合体がそば文化です。そばを敷居の高いものにせず、冷凍製品で簡単便利においしく、そば文化を世界に広げたいと常々考えています。

実際に海外輸出に取り組む中で、冷凍麺のメリットを感じています。例えば先ほどご紹介した冷凍そばは、レンジで温めて、添付のそばつゆで味わっていただくもの。そばの茹で方、食べ方がわからない海外の方にも、気軽に味わっていただける商品なのです。

今年の冷凍そばの輸出量は、昨年比1.5倍。今のところ、主な輸出先は香港、ハワイ、LAなど。現地の日本料理店などで利用されることも多いようです。海外の日本食としてそばはまだ定着していないからこそ、冷凍そばは大きなチャンスになると思います。

大谷さんお気に入りのそばの食べ方は、油揚げとネギ、かつおぶしをのせたぶっかけそばだとか

現在、信州そばの販売は順調に増えており、長野県産そば粉の仕入量も年々増加しています。安定的に販売量・仕入量を増やしていくことができれば、耕作放棄地の解消など、社会問題の解決にも貢献できます。

また、冷凍麺で信州そばを輸出する中で、世界中のいろいろな場所で信州そばのおいしさにふれた方が、信州に行ってみたいなと興味を持ってくれるかもしれません。

信州産の原料を使い、信州で製麺する「信州そば」を通して、これからも長野県の魅力をより発信していきたいですね。