有限会社キサラギ(諏訪市)

地元のおいしさをお土産に変えて。長野の魅力をまっすぐ伝える新しい商品づくりに挑む

卸売・商社

長野の観光土産の卸売業を営む有限会社キサラギは、今年で30周年。社名が表に出ることは少なくとも、高速道路のSAや観光地の土産物店などを通じて、多種多様な食品アイテムを届けてきました。近年では地元食材を活用した自社商品の開発も手がけ、しあわせバイ信州の理念とも重なる動きが進行中です。今、注力していること、そしてこれからの展開について、2代目代表の小島寿弘さんにうかがいました。

コロナ禍が転換期となり、自社製品の開発に着手

1995年に創業したキサラギは、県内の観光施設にお土産を納品する卸売会社です。現在扱っている商品数は200〜300アイテム。ケーキやクッキーなどのお菓子から、麺類、佃煮といった惣菜まで、幅広い食品を手がけています。

実はコロナ禍以前は、メーカーから紹介された商品を仕入れ、土産物店へ卸すのが仕事の中心でした。しかし、観光客の激減によってお土産が売れないという危機に直面し、一度商品を改めて見直すことにしました。

数あるお土産の中からお客様に選んでいただくためには、地域に根ざした商品が欠かせない。そう考え、商品ラインナップを一気に絞り込み、自社のプライベートブランド開発をスタートさせました。大切にしたのは、地元ならではの食材を使うこと。製造してもらうメーカー探しには苦労したものの、条件が合う限り長野県内のメーカーにも依頼し、商品化を進めてきました。

製造メーカーはそれぞれ異なるが、パッケージデザインを統一してブランド化

自社で開発した主力商品は、八ヶ岳山麓の新鮮な牛乳を使った「八ヶ岳ミルクシリーズ」。バームクーヘンやカステラケーキ、ミルクワッフル、ミルクジャムなど、多彩なラインナップを展開しています。
なかでも、牛乳を練り込んでしっとり焼き上げた八ヶ岳牛乳ドーナツは、松本の渡辺製菓さんに製造をお願いしているもの。地元の素材と、県内メーカーの技術が組み合わさることで、特色ある商品に仕上がったと思います。

人気映画のタイアップ商品も手がけて話題に

左の劇場版『名探偵コナン隻眼の残像（フラッシュバック）』缶は、映画館などで販売された

2025年春には、劇場版『名探偵コナン隻眼の残像（フラッシュバック）』とのタイアップ商品も誕生しました。オリジナルは、1年半ほど前から販売している「八ヶ岳ミルクシリーズ」の八ヶ岳サクサクミルクキャンディ。映画の舞台が国立天文台野辺山宇宙電波観測所だったことから、八ヶ岳エリアの牛乳でつくるこのキャンディはぴったりのアイテムでした。
缶のイラストはシールではなく直接印刷にこだわり、手元に残る記念グッズとしても楽しめる仕様に。長野県限定、1万7000個の限定販売でしたが、このアイテムを通じて地元のおいしさを多くの方に届けられたことをうれしく思っています。

どちらも信州産そば粉を使用して、信州のメーカーが製造している

このほか、自社開発商品の中では、信州産そば粉を使った半生そばもおすすめです。「なめ茸そば」は、千曲市・小林農園のなめ茸を使い、安曇野のメーカーに製造してもらっているもの。野沢菜そばも候補にありましたが、なるべく市場にない組み合わせをと考え、この商品が生まれたのです。つゆとは別にパックされたなめ茸は、温・冷どちらのそばにのせてもおいしいんです。
また「水にもこだわった信州蕎麦」は、八ヶ岳の天然水を私が汲みに行き、信濃町のメーカーへ送ってつくってもらっている商品。信州産そば粉の風味のいい一品ができあがりました。

ほかにはないオリジナルのお土産で、長野の魅力を伝えたい

運転中にアイデアが浮かぶことが多いという小島さん。現在、県内の有名飲食店とコラボしたお菓子も開発中

自社商品の新たな挑戦として、松川町「なかひら農場」のりんご果汁を使ったノンアルコールビールも開発しました。たまたまYouTuberのスーツ旅行さんの目に留まり話題となった商品で、ひと口目はフルーティなりんごの香りが広がり、そのあとにビールらしい苦味が感じられる一本です。
りんごジュースは市場にあふれていますし、ビールは土産品として取り扱いの規制が厳しい。一方ノンアルビールであれば、SAでも扱ってもらえる。しかも地元産のりんご果汁を使えるという点が、開発を後押ししました。運転のためお酒を飲めない方や、女性にもぜひ試していただきたい商品です。

当社が大切にしているのは、子どもから大人まで楽しめる、“万人受け”するおいしさ。さらに長野の食材を使った商品なら、観光客の方のお土産にも、また長野県の方が県外の方へ贈る手土産としても、自信をもって選んでもらえると思うのです。
長野のおいしいものを活かし、魅力をしっかり伝えられる、今までにないオリジナルの味を今後も探り続けていきたいですね。