ARURA・しあわせバイ信州編集部
「信州が大好き!」をモットーに、発見や驚きに満ちた情報、ほっと安らぎを感じられる情報、テレビや雑誌では紹介しきれなかった情報など、長野県をますます好きになる情報を発信します。
初代は民芸運動に参画し、柳宗悦氏やバーナード・リーチ氏とも交流があった栁澤次男さん。現在では信州ものづくりマイスターでもある栁澤邦夫会長と、息子夫婦の哲夫社長、木育インストラクターの由香利さんが、その信念と技術を受け継いでいます。信州産木材に精通し、伝統の照明器具に信州からまつ家具、身近なテーブルウェアなどを手がけるお三方に、しあわせバイ信州につながる思いを聞きました。
民芸運動にルーツを持つ家具を、カラマツなど信州産木材で製作
当社は1948年創業。今年で77年の歴史があります。戦後、大工だった初代が家具をつくる木工所を始め、民芸運動の父・柳宗悦氏たちの指導のもと、テーブルや椅子などの民芸家具を製作していました。根曲り竹を張ったアームチェアは日本民藝館で賞をいただいたものです。古くから日本民藝館で使われてきたことから「民藝館型皿立て」と名付けられた皿立てもあります。また、民芸家具の一環としてつくり始めた照明器具は、クラシックな意匠で多くのお客様に親しんでいただいています。
「民芸は地産地消」とは柳宗悦氏の言葉ですが、当社で意識して地元産木材を使うようになったのは、2000年ごろから。カラマツの丸太の半割でカウンターをつくった、上高地ビジターセンターの家具工事が始まりでした。そこから、信州産カラマツを使用してスツールや小椅子、ダイニングテーブル「鼓テーブル」などを製作しています。
カラマツは木目が明瞭でナチュラルな風合いである一方、乾燥の際に狂いが生じやすい性質があります。そこで、「鼓テーブル」は木口を露出しない設計にするなど、板として狂いにくい工夫を施しています。
ほかに、信州産のクリやナラ、サクラなどを使って家具をつくることもあります。松枯れ材といって、病気で枯れてしまったアカマツなども活用します。木材それぞれに固さや節の有無など個性があるので、家具の用途に合う木材を選ぶことも大切。まさに、適材適所というわけです。
木材を通して、森林との関わりを考えてもらうために
(社長夫婦の)子どもが小さかったころには、ハンドル型のおもちゃや赤ちゃん用のスプーンとフォークなども手がけました。ウッドデザイン賞にも入賞し、今でも贈り物に選んでいただくことが多いアイテムです。
そうしたウッドトイのなかでも、県産アカマツでつくった積み木「ぱんけぃ樹」は特に人気です。パンケーキのような形の積み木で、自然の木なので部分によって厚みが微妙に違います。また手作業で仕上げているため、カーブも不均一。単純なようでいて、実は12枚すべてを積み上げるのはなかなか難しいんです。意外にも大人の方が夢中になってしまい、何人かで勝負するとつい真剣になりますよ(笑)。
小学校のPTAイベントでは、「箸をつくろう」という木工講座も行いました。このとき使った木材は、少し前まで校庭に立って子どもたちを見守っていた木。病気で枯れてしまって伐採されましたが、その木を乾燥させて材料にしたのです。
木は枯れても、木材として生かすことができること。樹齢60〜70年の木を伐採することが森林の世代交代につながり、それが地球温暖化対策にもなること。そうしたこともあわせて子どもたちに伝えることができました。自分の手でつくった箸には自然と愛着が湧きますよね。加えて、地球環境や森林のことを「どこか遠いところの話」ではなく、「自分の暮らしとつながっていること」として考えてもらえたらと思っています。
伝統の照明からコラボ商品まで、暮らしを彩る木工品の数々
木工所から歩いて3分、川を挟んで相澤病院の向かい側にあるショールームには、伝統的な吊り下げ照明器具や電気スタンド、スツールなどの信州からまつ家具、木べらなどのキッチンツールやウッドトイが並びます。修理にも対応していて、「65年前に買った照明器具が壊れてしまったので直してほしい」というご依頼をいただいたことも。木の照明器具のいいところは、修繕しながら長く愛用いただけること。木のフレームはプラスチックと比べて経年劣化が少なく、和紙は障子のように張り替えることができるのです。
近年では、松代焼の陶器と内山紙、当社の信州カラマツの木製フレームという、伝統工芸を組み合わせたランプシェードもつくりました。デザイナー・小林幹也さんやリーフデザインパークとコラボした照明器具や、アウトドア用の畳めるテーブル、チェアなども人気です。基本的には受注生産になりますが、県産材の民芸木工品を直接見ていただけますので、ぜひショールームに足を運んでみてください。
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