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南信州の自然が育んだ木材で、自然に還る糸を製作。森林を守り、次の世代に引き継ぐために

長野県最南端に位置する根羽村は、総面積の92%を森林が占めています。そんな根羽村で、新たな木材の利用方法として注目を集めているのが「木の糸」です。木の糸を使って初めて製作したジャケットは、阿部守一知事が着用したことでも話題に。株式会社グリーンベネフィット代表で、根羽村森林組合の参与、根羽村役場では地方創生アドバイザーも務める岩見義明さんに、この取り組みについて話をうかがいました。
根羽村の杉の間伐材を活用して、サステナブルな天然素材を
2024年4月、根羽村の杉の間伐材を原料とした「木の糸」と、飯綱町のりんごの搾りかすで作った「りんごレザー」のボタンを組み合わせたジャケットを、阿部知事に進呈しました。地域資源を生かしたサーキュラーエコノミー(循環型経済)の実現につながる製品ができたと思います。
生地に触れてみると、木からできているとは想像できないほど、やわらかくてなめらか。着るほどになじんでいくという
根羽村の杉で「木の糸」を作ることになったのは、戸建て需要の減少が続く現在、建築木材以外の木の使い道を模索していたときでした。杉の間伐材の多くは木材チップとなり、バイオマス発電に使われています。もっと木そのものを生かしながら、森のためになる活動ができないかと考えていたところ、徳島の上勝町というところで杉の木を使ってタオルを作っていることを知ったのです。その考えにとても共感したことから、業務提携を結び、ノウハウを教えてもらいながら、ともに手を携えて相乗効果を高めていこうと。上勝町や根羽村だけでなく、全国各地の山村の森林資源を用いて、サステナブル素材を生み出す未来をめざして取り組んでいます。
自然の中で分解される木の糸の生地は、大阪・関西万博のユニフォームにも採用
古くなった木はco2を吸収しづらくなるため、40年ほどで伐採して植え替えが必要。間伐材はバイオマス発電などに使われる
「木の糸」の原料は、こういった間伐材のチップです。作り方は、実は非常に手間がかかっていて、
- 間伐材を粉砕したチップを溶かし、植物性繊維のセルロースを抽出
- アバカ(麻)を加えたセルロースを均一に伸ばして和紙を作る
- その和紙を細く裁断し、撚(よ)っていく
という工程を経て、木の糸ができあがります。
そしてさらに木綿と合わせて布を織り上げ、そこからタオルやジャケットなどの製品が生まれます。原料は根羽村の杉ですが、すべての工程を長野県内で行うことは難しく、山梨や静岡、四国などの工場と提携して行なっています。
杉の木の糸の色は、白ではない、生成りのような自然の色合い
木の糸で作った衣服を畑に埋めたら、穴が開いてぼろぼろになります。微生物が食べて、土に還るんです。この生分解によって、また栄養に富んだ土壌が生まれるのです。
大阪・関西万博の医療スタッフ用のユニフォームにも、この木の糸で作る衣服が採用されました。ポリエステルの服は、洗濯によって分解されるマイクロプラスチックが海洋汚染の原因となるのですが、生分解性に富んだ木の糸は自然環境で分解しやすい。海洋プラスチックゴミゼロをめざしている大阪府の趣旨と一致したというわけです。
木の糸×草木染めにも注目。長野の四季を表すタオルや、ワイナリーのエプロンも
木の糸のフェイスタオルは銀座NAGANOで販売予定
木の糸で作る製品としては、「根羽スギKINOFフェイスタオル」に注目していただきたいですね。軽くてやわらかく、洗うたびにふんわりとした質感になるんです。
また「四季彩(しきさい)」というシリーズで、大町市の染色家「solo solo」さんによる草木染めしたタオルも展開する予定です。冬は蕎麦、春は桜で染めるなど、季節ごとに長野らしさを感じていただけると思います。
このほか、東御市のヴィラデスト ガーデンファーム アンド ワイナリーのカフェエプロンも製作しています。こちらの染色もユニークで、シャルドネやメルローなど、役目を終えたブドウの木を使っているんですよ。店頭でエプロンを着用しているスタッフさんを見かけたら、ぜひ声をかけてみてください。
国産材を使った組み立て式仮設小屋「Hut」。子どもたちの居場所不足解消にも役立てたい、と岩見さん
今後は、根羽村の杉とヒノキを使って、Hut(ハット/小屋)をキット販売したいと考えています。6畳ほどのオールウッドの空間で、シックハウス症候群の原因となる接着剤を使わず、ビスとアルミで簡単に組み立て、解体することができます。モールの建物内に木の空間を作ることもできますし、役所などの敷地に建ててイベントとして使うのもいいかもしれません。木の空間は心身が安定するというデータもあるので、子どもが過ごす学童のような場所にも適していると思います。
こうした事業を通じて、木材の活用の幅を広げ、それを地場産業にすることで、根羽村の山林は守られます。また長野県内にとどまらず、日本各地でさまざまな人たちと手を組みながら木を活用し、それをみなさんに使っていただくことが、日本の山を守ることにつながります。まずは長野県が森林県としてモデルになれるように。そしていずれは全国にこうした取り組みが広がっていくことを願っています。
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ARURA・しあわせバイ信州編集部
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