PROJECTS
伊那食品工業株式会社(伊那市)

「かんてんぱぱ」で親しまれる寒天のトップメーカー。信州から暮らしを支える寒天のちから


メーカー/食品・農林水産

1958年に設立した伊那食品工業株式会社は、「かんてんぱぱ」ブランドで知られる寒天メーカー。家庭用の寒天製品にとどまらず、さまざまな分野で同社の寒天・ゲル化剤が活用されています。創業からの歩みと大切にしている理念、そして信州の食材を使った新商品づくりについて、専務取締役の塚越亮さん(写真右)と、研究開発部商品開発室の伊藤翔さん(写真左)にお話をうかがいました。
 
 
信州の風土に育まれた寒天づくり。「年輪経営」で着実な成長を
 
 

「かんてんぱぱガーデン」のショップには家庭用の寒天製品がずらり

 
 
当社は海藻を原料とする寒天をはじめ、その他天然物由来のゲル化剤の総合メーカーとして、現在68期目を迎えています。もともと、海のない長野県の伊那・諏訪地域で寒天づくりが発展した背景には、冬の厳しい気候があります。夜は冷え込み、日中は晴れて乾燥する気候が、「凍らせて溶かす」という寒天の製法に適していたのです。寒天は農閑期の副業として生産され、全盛期にはこの地域に数十社もの会社があったそうです。
 
寒天は低カロリーで食物繊維が豊富な食品です。そんな寒天を食生活に取り入れて健康的に過ごしてほしいという思いから、お湯で溶かして固めるゼリーの素や、牛乳で作るプリンの素など、“ちょっと手づくり”をコンセプトにした家庭用製品を展開しています。
1981年発売のロングセラー「カップゼリー80℃(エイティーシー)」は、80℃以上のお湯で溶ける、当時としては画期的なものでした。味のバリエーションも12種類と豊富にあり、特に信州では多くのご家庭で選ばれ続けています。
 
理念は「年輪経営」。木が毎年必ず年輪を刻むように、急激でなくても着実に成長していく。そうした確実で安定した歩みが、自分たちだけでなく、会社を取り巻くすべての人の幸せにつながると考えています。
 
 

自身のお気に入りの商品について語る、伊藤さん、塚越さん、秘書広報室の千村香里さん

 
 
長く愛される家庭用製品から多彩な業務用まで、広がる寒天の可能性
 

家庭用ブランド「かんてんぱぱ」は、現在約200種類の商品を展開しています。先ほどお話ししたゼリーの素や、スープや味噌汁にひとつまみ加えるだけで手軽に食物繊維を摂取できるスープ用糸寒天などは、県内のスーパーでも販売しています。
直営店やオンラインショップでは、濃厚なのに罪悪感なく楽しめる「寒天まぜそば うま辛担々風」や、生パスタのような食感の「寒天パスタ」、調理なしでそのまま食べられる「寒天グラノーラBAR」なども展開。また、やわらかく固まる介護食用の粉末寒天も、近年注目を集めています。
 
 

研究開発部では、全社員の一割を占める約60名が日々研究開発を行なっている

 
 

実は、家庭用商品だけでなく、当社の売上の約7割を占めているのが業務用製品です。地域の洋菓子店や和菓子店、全国の食品メーカーに、寒天やゲル化剤を原料として提供しています。
用途は食品にとどまりません。歯磨き粉や化粧品、可食性フィルム、医療製品など、幅広い分野で当社の寒天・ゲル化剤が活用されています。みなさんも知らないうちに、日常のいろいろな場面で手に取っているかもしれませんね。
 
ユニークな事例では、研修医が手術の練習に用いる肝臓の模型も手がけました。3Dプリンタ製の血管に、当社の植物由来のゲル素材を流し込んで形成し、リアルな触感や弾力、複雑な立体形状を再現しています。
 
このように、寒天には多様な可能性が広がっています。本社のある「かんてんぱぱガーデン」内の研究棟「R&Dセンター」では、日々さまざまな研究を重ね、お客様のニーズに応じた製品づくりに取り組んでいます。
 
 
県産食材もふんだんに。野菜・果実ミックス飲料が、寒天でもっとおいしく
 
 

2026年3月発売。長野県のシンボル・カモシカとライチョウを描いたパッケージにも注目

 
 

最新の商品は、「にんじんと4種の高原野菜と信州りんごmix」。野菜や果物の加工に精通したカゴメ株式会社と、寒天のスペシャリストである当社が共同開発した飲料です。信州の豊かな土壌で育ったりんご、ほうれん草、レタス、ビーツ、セロリに、カゴメの契約農場で栽培された国産にんじんをブレンドして使用しています。
ポイントは、固まる力が弱い特性をもつ「ウルトラ寒天」を配合していること。寒天を飲料に活用することで、とろりとした濃厚な喉越しと、すっきりとしたあと味を実現しました。素材本来の甘みとコクも引き立てます。お子さんから年配の方まで、幅広い世代に楽しんでいただきたいですね。
 
本来であれば、すべて長野県産の原料を使用したいところでしたが、それには安定した生産量の確保が欠かせません。長く続けていく商品だからこそ、生産者の方々にも無理のない形で栽培していただきたいと考えています。これは、理念である「年輪経営」にも通じる想いです。
 
当社では関連事業として、遊休農地を有効活用する目的で設立した「ぱぱな農園」を運営しています。シニア社員の活躍の場にもなっており、農業に関心のある若手社員も参加しています。
寒天の製造過程で出る海藻残渣を有効活用し、海のミネラルを豊富に含む海藻肥料「養土藻」として土づくりに役立てている点も特徴です。こうした取り組みも、資源を循環させるひとつの形といえるでしょう。
 
今後も寒天の魅力をより多くの方に届け、親しんでいただけるよう努めていきたいと考えています。初夏にはちょっと変わった新商品も予定していますので、ぜひ楽しみにしていただけたらうれしいです。

【詳細情報】

住所
伊那市西春近5074
TEL
0265-78-1121
URL
https://www.kantenpp.co.jp