地域のもみ殻から生まれる固形燃料「モミガライト」で、地産地消エネルギーを実現

ハンガリー語で「3つのリンゴ」を意味する「ハーロム アルマ」。ハンガリーでの駐在経験がある代表の岡 賢昭さんが、移住した松本の地で、「人」「環境」「未来」を結ぶ事業活動をめざして立ち上げた会社です。主軸にしているのは、お米のもみ殻を原料にした固形燃料「モミガライト」の製造販売。新しい燃料を手がけることにした経緯や思い、力を入れている取り組みについて、岡さんにお話をうかがいました。
薪ストーブが契機となった、松本での新たな挑戦

モミガライトを自宅の薪ストーブにくべる岡さん
私は東京出身で、以前勤めていた会社の転勤で松本にやってきました。居心地がよく、街の雰囲気もすっかり気に入り、家を建てて念願の薪ストーブも導入。そんな折、所属していた事業部が別会社に売却されることに。
東京に戻る、新会社で働くという選択肢もありましたが、薪ストーブのメーカーさんから「モミガライト」を紹介してもらい、その取り組みに感銘を受けました。そこで会社を辞め、新たに自分の事業として挑戦することにしたのです。
モミガライトとは、稲のもみ殻をすり潰して加熱成形した固形燃料です。原料は100%もみ殻で、固形化のための接着剤なども使っていません。
私はもともとフードロスに関心があったのですが、米農家さんが収穫したもみから玄米にする際、大量のもみ殻が出て、その処分が課題になっていることを知りました。もみ殻から燃料が作れるのなら、地域の資源を有効活用し、環境負荷を減らせるのではないかと思ったのです。
モミガライトの製造装置は、広島の会社が開発したもの。当社ではその装置を安曇野の自社工場に導入し、地元農業法人のもみ殻を原料にモミガライトを製造しています。無駄な輸送エネルギーをかけずに資源を活かし、それを地域の暖房燃料として使う。いわば、地産地消のエネルギーを作っているというわけです。
高熱量で薪より長持ち。扱いやすさも備えたエコな燃料

製造過程で乾燥させるモミガライトは含水率が薪の1/2〜1/4ほど。熾火が長持ちするのも特徴
モミガライトのメリットはたくさんあります。
- 原料は100%天然のもみ殻で、通常は廃棄される資源を有効活用
- 稲作の副産物のため、毎年安定して確保できる
- 含水率5.5%と乾燥しているため、購入後すぐに使える
- 薪と比べて高密度で燃えムラが少なく、燃焼時間が長い
- 燃焼時に窒素酸化物や硫黄酸化物が発生せず、煙やタールも少ない
- 虫がつきにくく、形状も均一で室内保管しやすい
- 燃えかすの灰は植物性ケイ素を多く含み、土壌還元や融雪剤として活用できる
- 価格は、1kg(=約1本)あたり66円(※B品1袋18本入購入時)。薪1kgあたり80〜100円よりも低価格
一方で、デメリットもあります。
- 発火点が約410℃と高く、木材(約250℃)より着火しにくい
→先に細い薪などを燃やして熾火を作り、その上にのせれば、問題なく着火できます。 - 1本約1kgと見た目以上に重い
→ストーブの角などに打ち付ければ、手で簡単に折ることができます。 - 灰が多く出る
→土壌改良材として活用可能です。
こうした特性をきちんと理解していただいたうえで購入してほしいため、現在は店舗への卸売はあまり行っておらず、直接注文を受けての販売が中心です。長野県内であれば、配送にも対応しています。

パチパチはぜないため、キャンプにもおすすめ
モミガライトは、ストーブ用燃料にとどまらず、薪ボイラーのお風呂、アウトドアやバーベキュー、ピザ窯や陶芸窯など、幅広い用途に活用できます。
また、災害時の備蓄燃料としても有効です。湿気に強く、雨に濡れない環境であれば約5年間品質を保つことができます。缶に入れて燃やせば、寒い時期に暖を取ることも可能です。
地元のもみ殻が、地元の農作物を守る循環

「霜よけ助さん」の燃焼器は取っ手付きで持ち運びしやすく、折りたためるので収納も簡単
もうひとつ注目していただきたいのが、凍霜害(とうそうがい)対策としてのモミガライトの活用です。
4月から5月にかけて遅霜が降りると、果樹など農作物の生育が阻害され、その後の収穫に影響が出ます。霜は、風がなく冷たい空気が滞留することで発生します。そこで、霜が降りそうな夜は、農家さんが深夜から明け方にかけて畑で火を焚いて空気を循環させ、火を絶やさないよう見守る必要がありました。
そうした負担を軽減するため、JA塩尻市(現JA松本ハイランド)からの依頼で、オリジナルのモミガライト用ストーブ「霜よけ助さん」を制作しました。燃焼器にモミガライトを5本入れ、着火剤に火を付けると、ろうそくのように上から下へゆっくりと燃焼します。専用の燃焼器を用いるため安全性が高く、一度着火すると消えにくいという特性から、無風時には4時間以上燃焼が続きます。
こちらも、地産地消の凍霜害対策といえるのではないでしょうか。
原料であるもみ殻は、現状1〜2割ほどしか活用されていないといいます。今後はよりモミガライトの普及に努め、薪ストーブユーザーや農家の方々をはじめ、長野県の多くの方に使っていただけたらうれしいですね。また、製造仲間を増やし、いずれはバイオマス発電燃料としての展開にも挑戦していきたいと考えています。
